MRI株式会社三菱総合研究所

INNOVATION NETWORK FOR CO-CREATING THE FUTURE

神戸発 未来共創イノベーションカンファレンス
〜地域力を競争力へ〜

久元 喜造氏

久元 喜造氏

2018年1月25日、神戸市のホテルクラウンパレス神戸にて、「神戸発 未来共創イノベーションカンファレンス 〜地域力を競争力へ〜」(三菱総合研究所(以下、MRI)と神戸市との共催)を開催しました。スタートアップ、大企業、行政、市民など、地域の多様な主体の連携や共創によるイノベーション・エコシステムの構築をテーマに議論が行われ、当日は約160名の参加者を得て、盛会となりました。

INCFのアドバイザーである京都大学 経営管理大学院 教授 椙山 泰生氏による基調講演。神戸市チーフ・イノベーション・オフィサーの関治之氏をモデレーターに「なぜいま神戸でスタートアップなのか」と題したスタートアップ企業のトークセッション。最後に、再び椙山氏にモデレーターとして登壇いただき、「イノベーション・エコシステムの共創シナリオを探る」と題したパネルディスカッションを実施し、3部構成で議論を深めました。

冒頭、主催者を代表して神戸市長 久元 喜造氏よりご挨拶をいただき、「ポスト震災の都市像を考える上でのポイントは、イノベーションである。」、「スタートアップとのWin-Winの関係を構築し、クリエイティブな人材を集積させる。そして、グローバルな見地からより新しい発想、テクノロジー、コラボレーションによって山積する社会課題解決に取り組まなければならない。」との決意表明を受け、カンファレンスは幕を開けました。

基調講演:「起業エコシステムと事業創造」

椙山 泰生氏

椙山 泰生氏

「起業エコシステムと事業創造」と題した椙山氏の基調講演では、「新規事業はどのように創造されるのか」、「起業エコシステムのプレーヤーはどのような役割を果たしているのか」、「起業エコシステムを意図的に構築することは可能か」を論点に講演いただきました。

椙山氏は、まず、新規事業創造の核心はビジネスアイデアそのものではなく、そのビジネスに関わる人たちがコミュニケーションを重ね、フィードバックと修正を繰り返しながらビジネスとして発展させる学習サイクルであると指摘。

また、新規事業創造には、起業エコシステムの存在が極めて重要であるとし、シリコンバレーにおける起業エコシステムを例に、ベンチャーキャピタル、法律家、アクセラレーター、研究機関、大企業など、多様なプレーヤーが複数の役割を担う形で、支援の仕組みが「制度化」されていると解説しました。

起業エコシステムを意図的に構築する取り組みについては、米・欧・アジアの成功事例を紹介。エコシステムが成立し、シリコンバレーやイスラエルが競争優位を発揮している要因については「地域社会」のあり方がカギであるとし、「競合が協力し合う慣行や、研究機関と企業のネットワークといった、起業を後押しするような地域文化が熟成していれば、それはそのまま地域の競争優位性になる」と指摘しました。

椙山氏は、「新規事業創造とは“試行錯誤を伴う社会的なプロセス”であり、起業エコシステムが支えている。エコシステムの構築は、コミュニティ内の文化や起業家精神をどのように醸成するかがカギとなる。地域社会におけるソフト環境をどう整えていくかがが問われる。」と問題提起し、講演を締めくくりました。

スタートアップセッション:「なぜいま神戸でスタートアップなのか」

左から関 治之氏、大津 愛氏、藤久保 元希氏

左から関 治之氏、大津 愛氏、藤久保 元希氏

引き続き、関氏をモデレーターに、「なぜいま神戸でスタートアップなのか」と題したトークセッションを実施しました。パネラーとして、神戸市のスタートアップ育成支援プログラムに参加した経験を持つ大津 愛氏(Compass 代表取締役CEO)、藤久 保元希氏(DentaLight 代表取締役CEO)が登壇し、神戸市での経験を交えながら、スタートアップ視点で地域において起業するための望ましい環境等について語っていただきました。

まず、事業拠点を設けるにあたって重視する条件という質問に対して、「先輩起業家やロールモデルの存在、事業段階に応じた連続したサポート体制の存在」(大津氏)、「起業家は誰と社会をよくしたいのかという視点で考えている。人対人が大事なので、一緒にやりたいと思わせる行政側のオープンな姿勢、支援施策」(藤久保氏)と、それぞれ自身の経験から、条件を提示。神戸市のスタートアップ育成支援プログラムについては、神戸以外からの参加者も拒まず、外部者に対して開かれている点が高く評価されました。

地元企業との連携にあたって望ましいプロセス、行政に望むサポートという話題では、大津氏から「ベンチャーと連携したいと考えている企業とスタートアップをつなぐ一元化した窓口が欲しい」との意見が出されました。この話題を受けて藤久保氏は「両者がつながった先の共通言語を作ることも大切。」と指摘。また「成功、失敗にかかわらず、連携事例を蓄積してケーススタディができる体制を整えてほしい」「交流の場がより充実してほしい」という意見も挙がりました。

東京以外で起業することの不利な点としては、大津氏が「人材確保の難しさ」に言及する一方で、藤久保氏は「地方に一定数存在するスタートアップに親和性のある人材を独占しやすい」という利点にも触れました。また、「仮説検証や実証実験には、東京よりもコンパクトな地方都市の方がやりやすい」という点では2人の意見が一致。最後に、関氏は「地方では、人材にフォーカスし、先輩起業家の存在を活かしながら、選択肢として、スタートアップで働くというモチベーションを高めることが、層の厚いエコシステム構築につながるのではないか」と締めくくりました。

パネルディスカッション:「イノベーション・エコシステムの共創シナリオを探る」

最後のプログラムとして、椙山氏をモデレーターに、「イノベーション・エコシステムの共創シナリオを探る」と題したパネルディスカッションを実施しました。パネラーとして、本間 佑史子氏(フィッティン 代表取締役)、関氏、小野 由理(MRI オープンイノベーションセンター長)、牧田 和也(日本ビジネスシステムズ 取締役 副社長)が登壇し、それぞれの立場で、地域における共創によるイノベーション・エコシステム構築に向けた課題、展望について議論を交わしました。

左から椙山 泰生氏、本間 佑史子氏、関 治之氏、小野 由理、牧田 和也

左から椙山 泰生氏、本間 佑史子氏、関 治之氏、小野 由理、牧田 和也

ディスカッションの端緒として、本間氏は、スタートアップである自身の経験から、起業家を支援するエコシステムの重要性を語る一方、「興味を持つ企業は多いが、新しい案件をスピーディーかつ正しく判断できるチャネルが社内にない大企業が多い」と、課題である大企業との連携の難しさについて語りました。

この点について関氏は、行政としてマッチングを仲介する立場から、「幸福なマッチングのためには、連携後の具体的な事業イメージまで描けるぐらいの肌感覚を持ったハブ人材が必要。そうした人材を育成することも行政の役割」と、今後の行政側の課題について考えを示しました。

また、牧田氏は、大企業とスタートアップのマッチングに取り組んできた経験から、「大企業には、漠然と新規事業立ち上げという方針に対応しているだけの担当者もいる。ビジネスに本気でコミットしなければ結果は出ない。投資を求めるなら提案側は想定顧客を具体的に提示すべきであり、大企業はそれが戦略として妥当かどうかを判断すべき。」と、マッチングにおける両者の覚悟の必要性を指摘しました。

続いて、エコシステム構築に係る行政側の取り組みに話題が移り、関氏は、「行政の資産を活用し、自治体にしかできないスタートアップ育成支援を提供したい。具体的には、行政データや、地域社会、行政課題をオープンにし、起業家と職員が協働で課題解決を実現するサービス開発事業、『Urban Innovation KOBE』を推進中である。」ことを説明しました。

MRIの小野由理からは、「INCFでは、スタートアップをビジネスモデルの良し悪しだけで判断するのではなく、テクノロジーを深く理解したうえで本質的な支援をしていきたい」。「起業して一番苦しいのは、ファーストユーザーの獲得。自治体が率先して顧客になって、サービスと組織を育てるという視点も大切ではないか」。また、「自治体は、スタートアップに対し、オープンにテストフィールドを提供してもらいたい」との要望を述べました。これに対し、関氏は「自分たちのソリューションを自治体の現場で試したいというスタートアップ向けの窓口を設置する予定。担当課に引き合わせて、連携できる仕組みも整えていきたい。」と回答し、顧客やテストフィールドとしての自治体の役割が認識されました。

これまでの議論を受けて、椙山氏より、「多様なプレーヤーがそれぞれの役割を果たすことが、エコシステムが機能することにつながる。また、外部との連携を図る上では、それぞれが内部環境や窓口となる体制を整えることが必要。この場から、地域でのエコシステム構築に向けた取り組みが一歩前に進むことを期待したい。」との発言があり、パネルディスカッションを締めくくりました。

森崎 孝

森崎 孝

最後に、MRI 代表取締役社長 森崎 孝が閉会の挨拶に登壇、「社会課題を解決し、豊かで持続可能な未来社会を共創することが総合シンクタンクであり、MRIのミッションである。オープンイノベーションのプラットフォームであるINCFの活動を連携させながら、地域のエコシステム構築の一翼を担ってまいりたい。」と本カンファレンスを締めくくりました。

スタートアップ、企業や自治体がそれぞれの強みを発揮し、役割を果たしながら、どのようにイノベーションを生み出す有機的なエコシステムを構築していくか。さまざまな論点から多くのヒントが提示されたカンファレンスとなりました。

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